ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

そろそろGoogle Street Viewについて…

…書きたいのだけど、20日のこともあるし色々と時間を削られていてなかなか実現しない。とりあえず考えていることと今思いついたことを箇条書きで列挙してみる:

  • 判断方法・基準について
    • GSVが「キモいかどうか」という議論には全く興味が無いし、キモいから規制して良いと考えている人間はマジでキモいと思う
      • キモいから自分は使わない、というのは個人の自由であり、そういう人を非難するつもりはない。他人の自由を規制する理由にはならないので、キモいから規制して良いという人については非難する。
    • GSVに懸念を示すのが日本人らしい思想であるという主張は、松永英明氏のアンケートで既に否定されており、相手にする必要はない。これを津田大介氏のように同調圧力と評価することについては、肯定派と否定派がいるだろうが、本質的な問題ではなく、その立場を理由に相手の論理性を否定しようとする主張は読む必要がない(たとえば高木浩光氏のブクマコメント)。もちろん、逆の「GSVを受け入れろという同調圧力がある」という主張についても、肯定派と否定派が(以下同文)
    • 類似の議論として、「怖いと思う」ことは、それ自体は規制の根拠となってはならない(「自宅の近所を外国人が歩いているのは不安だ」→「歩き回ることを禁止しても良い」という主張は失当)。規制は、具体的かつ相当な犯罪や権利侵害の発生の危険性があることを理由としなければならない。
    • GSVという黒船にひたすら戸惑うだけの日本人、という印象論は相手にする必要がない。必要かつ正当な理由があれば、黒船にNOを突きつけるべきという立場が妥当。
    • Googleだから規制しても良い、というBeyond all helpな主張は相手にする必要がない。
      • Googleの行為が何らかの市場における独占的な立場を悪用したものである、という主張に理由があれば、それは傾聴に値するかもしれない。(地図サービスで独占的立場にあるとは考えにくいが。)
  • 他行為可能性について
    • 「従来の地図サービスで十分だから違法化し排除しても良い」という主張は相手にする必要がない。
    • 「従来の地図サービスでは十分ではない有用なサービスだから必ず適法化すべきであり排除してはならない」という主張は相手にする必要がない。
    • 「事前に国民に説明し同意を得ること」を要求する考え方は採用できない(そのような要求には理由が無いし、現実のビジネスでそのようなことが要求されていないことを理解していない。NHKが「アナログ」マークを表示するようになったことについて事前に同意を得なかったことを責めないというのは、主張の均衡を欠く)。
      • 事前説明を行うということは、関連する特許の取得を放棄しろという主張でもある。「事前に説明することに何の問題があるのか(修辞的疑問)」という主張には穴がある。(ソフトウェア特許を容認するか否かは、また別の議論である。)
  • 権利侵害の主体について
    • Googleであると断定する立場は支持できない。むしろGSVは中立的道具である(少なくともそれを意図している)とする立場が妥当と考える。
    • GSVから特定の写真を特定して注目させる人間がむしろプライバシー侵害等の正犯であるという立場は支持しうる。
      • GSVの公開をその幇助と言えるかというと、単に公開するだけでは不十分であると考える(中立的道具)。Googleから積極的な権利侵害の推奨があれば幇助が成立するという主張はアリ。
    • この文脈で、Winny違法論者(たとえば高木浩光氏など)がGSVを積極的に悪意ある道具であると主張するのは自然である。が、同時に、読む人は自分の論理に反する主張に煽動されないよう注意する必要がある。
  • プライバシーの実体について、
    • 単に現行法の保護範囲か否かのみを基準に論じる主張は、実定法の議論としてはアリだが、あるべき実体法についての議論とは区別すべき。
      • 一方で、法律上保護されるプライバシーであるか(であるべきか)をしっかり考えることなく、脊髄反射的にプライバシーの問題だ、とする主張には問題がある。
    • プライバシーの概念が外部的に影響を受けて修正されることはあり得ないという主張は支持できない。考慮の結果やはりプライバシー概念は変わっていないのだという主張はアリ(そして個人的にはそうだろうと考える)。
    • その侵害を当然のように前提としている議論には眉唾をつける必要がある。逆も又然り。
    • 基本的には個人情報保護法のあいまいさを無視して何でもプライバシーの範疇であるとする主張は読む必要がない。
  • 故意および違法性について
    • Googleが写真中の顔など一部にモザイクを施しているという事実を無視した主張を読む必要はない。
      • 写真チェックの見落としがある点を指摘する主張のうち、見落としがあることを理由にプライバシー侵害の可能性の結果防止努力を全く認めないとする主張も読む必要がない。結果防止努力はあるが不十分であるという立場は(その妥当性については直ちに評価できるものではないが)アリ。
  • その他
    • 刑法学におけるいわゆる「不安感説」は妥当ではないということを日本人はもっと理解するべき。
    • GSV規制派の中には、規制する正当な理由をもっていなくても、GSVだけをターゲットとするような規制ルールさえ作れば(それに正当性が無くても)OKだと思っているような人間(たとえば/.jpのこういう発言)がいるが、明らかにまずい考え方である。詳しくは id:atsushieno:20070530:p1 を参照のこと。
    • 法の不遡及について理解していない主張は読む必要がない。

他にも思いついたり思い出したりしたら追記するかも。しないかも。妥当なサービスの範囲とかも議論の余地はあるけど、個人的には適法と違法のマージナルラインにしか興味が無い。(こんな細かい部分まで写真になっているのは「キモい」という議論は相手にしない。「違法なプライバシー侵害の可能性がある」という議論には意味がある。)