more on winny : freenet, そして実質的故意概念
comme caは"like that"という意味らしい(フランス語はさっぱり知りません)。じゃあmono comme caは…意味不明です。
何か最近ノイズの多いWinny問題だけど、もう少しコメントしてみよう。前回書いたことで、WinnyとFreenetには客観的な相違は存在しないということが分かっただろうから、今日はもう少し違う視点をふたつ盛り込んでみよう。ひとつは、Freenetが実現する正義について。もうひとつは、刑法学における実質的故意概念について。(京都府警の土俵で議論するなんて、何て親切な!)
セキュリティについて多少でも知識があれば、HTTPSやSFTP、SSHが理論上安心して使用できなくなるだけで、インターネットが現在可能にしている社会インフラが破壊されることは分かるだろう。あなたはもうオンラインで買い物をすることが出来ない! リモートで自社から客先に納品したシステムのメンテナンスも出来ない!
NHKスペシャル「変革の世紀」でPhil ZimmermanがPGPについて語った回を思い出せる人が、どれだけいるだろうか(あ、僕は見てなかった)。通信の秘密を保障する暗号化通信が規制されてしまう可能性に懸念できる人なら、言論の自由を保障するFreenetが規制されてしまう可能性に懸念できるだろう。もうどんな良心的なアメリカ兵でも、同僚がイラク人を虐待しているのを、こっそりネットから内部告発することも出来ない。江角マキコの未納情報だって内部告発できない。会社がソフトを違法コピーしているという情報を暴露することだってできない。2chに書いたってログ追跡されるかもしれませんよー。私企業が金で買えますからねー。
Freenetが著作権侵害に使用されていた場合、Ian ClarkeにFreenet開発の停止を要求できるだろうか? 出来るという立場が、主観的違法論の帰結なのである。Winny違法論者たちが、WinnyとFreenetの技術的相違を提示できていない現状、そう見なされてもやむを得ない。
さてここでもうひとつフィルタ。別にFreenetだって違法でいいよ、という人、はいさようなら。ただし僕は内部告発されて困るような違法コピー企業の仲間だと見なすけど。
なぜそうなのか分かるだろうか? 刑法学における故意の実質的意義は何であるか考えてみれば分かるだろう。が、分かりやすく、以下のような例を考えてみてほしい:
- 著作権侵害をするための装置が必要になったため、自ら開発した
- 著作権侵害をする意図で開発していたわけではないが、後になってそのソフトを使用して著作権を侵害しているユーザーがいることが分かった
- 著作権侵害をする意図で開発しているわけではなく、現状誰もそのソフトを使用して著作権を侵害しているユーザーも認知されていない。しかし、技術的には著作権侵害のために使用することが出来る
従って、たとえ最後の選択肢が当てはまる場合であっても、開発がある程度進んで違法目的のユーザーが出てきた段階で、「バージョンアップを続ける」ことも出来なくなってしまう == どんな開発目的であっても、一部ユーザー(もしかしたら競合企業の意図的な行為かもしれない)のために妨害できてしまうのだ。
結局、winnyとfreenetの開発について、主観面で区別をつけることは出来なくて、客観面で区別をつけることも出来なかったら*1、どちらかを選ぶしかない - FreenetイコールWinnyを違法にするか、合法にするか。
*1:国際裁判管轄みたいなくだらない話をしようと思った人、ハイさようなら