ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

Yafooフィッシング詐欺の件

当然新聞社も何が問題なのかを明示するために、著作権法違反を使ってフィッシング詐欺容疑者を逮捕した点を強調して報道していると思うし、既に小倉弁護士も言及されているので、あえて釣られるのも何だけど…

まずYahooのWebページレイアウトそのものが著作物であるなどとは解釈されていないことは前提として*1、著作物たりうるのはせいぜい画像くらいしかない。ちっこいアイコンは創作性が欠けるか財産的価値が無い(はずれ馬券が財物とは言えないないのと同様に著作物とは言えない)ので、やはり無理がありそうだ。もちろん、必ずしも微小な画像が著作物でないとは言い切れないが。

そもそもフィッシング詐欺において、その対象となるサイトの構成を模倣すること自体は当然の手段であろう。これを著作権法違反として別罪として扱うというのは、人を射殺したときに衣服に穴が空いたことをもって殺人罪と器物損壊罪の併合罪であると評価するようなものである*2。通常、ある企業の関係者であることを被害者に秘して欺罔行為を行った場合、詐欺罪と別個に不正競争防止法違反や商標法違反が問われることはない。これも評価上一罪として詐欺罪に吸収される。

不正競争防止法で十分に対応可能な事件をあえて著作権法違反で提訴する理由は何か? もちろんこれを機に著作権と呼ばれるものの範疇を拡大してやろうではないかという怪しからん奴がいるのかもしれないが、実際はもっと単純な話で、

つまり検察側が点数を稼ぎたくてやっているのだろうな。

著作権法違反はいくら何でも黒星になると思うけど。

*1:これが理解できないという初心者の人は著作権判例百選第3版76頁の知恵蔵事件判決を参照

*2:このような事案は評価上一罪とされる。つまり、(当然だが)器物損壊罪は殺人罪に吸収される。