ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

クロマティ高校

いやあ、しばらく笑いが止まりませんでした。これでクロマティが黒でないとしたら(いや僕は黒だと確信している)、こりゃあもう悪役の名前にバンド名を流用しまくっているJOJOの奇妙な冒険やBASTARD!!もただじゃすまないよね。ジョジョを読んでから僕はDIOの音楽なんて聴きたくなくなりました、なんて奴はフツーに考えていないでしょ(いや僕は実際聴いたこと無いけど)。訴えられる側の当事者としてはちっとも冗談ではないと思うので、ちょっとパブリシティ権についてきちんとした理論構成をしておかなければならないだろうと思う。って、後で追記しているのだけど、明らかにパブリシティ権の理論的再構成の話ではなく諸説に基づいて本件を分析しているだけなので、理論的再構成は他の人に任した〜。

まず、判例を度外視して考えると、パブリシティ権をプライバシーに基づく個人権と構成する立場と、経済的利益に基づく個人権であるという立場のふたつがあると思うけど、プライバシー権的構成で考えればクロマティ高校ウォーレン・クロマティのプライバシーを侵害する性質のものではないことは明白だから、問題になるのは財産的構成の場合だけだ。もちろん、クロマティ高校の描写がクロマティをターゲットにしたものではないことは、その漫画を数ページしか見たことのない僕でも知っているから、名誉声望保持権の問題にもなり得ない。

で、財産的構成を採る場合に、その法源は一体何であるのかを議論せずに考えることは絶対にできないが、まだまだここは議論されている領域だと思うので(確か平成16年重判にギャロップレーサー判決の議論が載っていたような)、自分なりに書けることを書いておこう。

通常、著名表示の冒用行為というのは(特に商標登録も無い場合)不正競争防止法の範疇なのだけど、映画の鑑賞に際しては事前の広告等を見るのが通常であり、ポスター等を見ればクロマティ高校クロマティを混同することはあり得ない(混同招来行為の可能性は無い)。では著名表示の冒用行為としてどうかというと、一般的な不法行為的構成で考えれば、クロマティ高校によってクロマティの名声が希釈化されるためには(実際にクロマティはそう主張しているのだが)、両者の間に相当の関連性が不可欠である(つまりクロマティ高校の評判がクロマティの評判に影響する必要がある)。しかしクロマティ高校を見てクロマティの評価を下げる人はまず居ないだろう(良質感の汚染の評価としても同様のことが言える)。一部には著名表示の冒用行為を非成果競争行為的構成で考える立場もあるが、不正競争防止法上の権利を請求できる者は、営業上の利益を害される者でなければならないところ、クロマティクロマティ高校に営業上の利益を害されたとは言い難い*1。おにゃん子クラブなどとはだいぶ性格が違う。

で、パブリシティについて権利性が(まあ理論的には破綻していそうなので判例上)認められているのは、いわゆる肖像権であって、名称そのものについて、商標法や不正競争防止法以上の保護を認めたという判例は、僕は寡聞にして知らない。最終的にはやはりcommon sense tellsということになるのではないか。競走馬の名前だのロックバンドの名前だのが全部要許諾なんて、漫画家や小説家に主張しても笑い飛ばされるだけではなかろうか。僕が最初に見て笑いが止まらなかったように。

*1:ここではパブリシティ権法源の実体が何であるかを議論しているので、「パブリシティ権」をこの営業上の利益の根拠として説明することはトートロジーなので不可能であることに注意