ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

「刑事訴訟法」 寺崎嘉博

本屋に並んでいたのをパラパラと眺めていたら、アンパンマンジャムおじさんが公訴事実の同一性の説明に使われていて、何じゃこりゃあと思ってつい買ってしまった。

2006/09/01発行とかいうことになっているようで、Amazonの奥地に行っても発見できなかった。

本編はまるで前田雅英のようなビジュアル系に見えるが、たまに微妙に色モノっぽい。別の意味でライト・アカデミズムなのか。

どこぞの人をマネして、要点を抜粋してみよう:


学生Q:先生、合法・違法とか、有効・無効とかいう法的判断の区別がありますよね。これらの概念は、どう違うんですか?
講師A:これはまた、難しい質問ですね。まずは、実体法(民法や刑法など)と訴訟法(刑事訴訟法民事訴訟法)における法律行為、訴訟行為の評価の違いから説明しなければなりません。かつてゴルトシュミットは、訴訟法律関係説を批判し、訴訟状態説を提唱しました。そこで…
学生F子:ちょっと、いいですかァ! ゴルっちとかァ、ゴルゴ松本とかァ、超ォ、ウザッタイと思うわけェ。なんでェ〜、そんな昔の人の言ったことを持ち出すわけェ?
(P.7)
A:…したがって、広い意味での刑事訴訟(これを「刑事手続」と呼んで、狭い意味での刑事訴訟と区別する人もいます)を念頭に置くと、「違法」行為などという概念もまた、刑事訴訟法の中で使われることになるわけです。
 そういう意味からすると、用語法が崩れてきているとは言えるでしょうね。
F子:じゃあ、用語の違いを言ったって、意味な〜いじゃん!はい、お仕舞い、お仕舞い。
(P.10)

A:F子さんの嫌いなゴルっちやザウアーが出てきますが、いいですか。
F子:わたし近ごろ、ちょっと好きになったの。ナイナイの矢部っちの方がずっと好きだけどォ。
A:ゴルっちは、訴訟法律関係説に対抗して、訴訟状態説を提唱しました。他方でザウアーは、訴訟の構造を、実体形成過程・訴追過程・手続過程という3つの過程(線)で分析しました。これらを受けて団藤教授は、訴追過程は実体形成過程および手続過程(ことに手続過程)の中に解消できるから、2つの面(=実体形成過程と手続過程)だけで訴訟構造を分析できる、そして、実体〔形成の〕面では訴訟状態が妥当し、手続〔過程の〕面は法律関係が妥当する、と言ったのです(団藤重光『訴訟状態と訴訟行為』〔1949〕1頁〜。団藤135頁〜)。
 この団藤説に対して、実体面・手続面という2面の分析は職権主義の下で妥当する、当事者主義では、むしろ訴追過程を強調すべきだと批判したのが平野博士です。博士は、訴訟追行過程・実体過程・手続過程という3面説を唱えます(平野29頁〜)。
(P.280)

"Take a break"のセクションだけかと思いきや、本編でも…


被告人を特定する基準は何か?
(1)氏名が冒用された場合 Aが他人の氏名(反町隆史)をかたった場合、表示は「反町隆史」だが、検察官が訴追しようとしたのはAである。この点を考えて意思説が出てきた。しかし、起訴状の記載を「反町隆史〔偽名〕ことA〔本名〕」の意味に解すればよく、意思説によらなければ説明できないものでもない。ことにAの身柄が確保されている場合は、問題がない。氏名の冒用がわかったときに、「反町隆史」などの起訴状の記載は、単なる表示の誤りとして訂正すれば足りる。冒用が発覚しないまま判決が確定したときも、判決の効力はA(「反町隆史ことA」)に及び、反町隆史には及ばない(最決昭60・11・29刑集39巻7号532頁)。
(2)身代わりの場合 ...
(P.39)

どう考えても要点ではないな。

引用は渥美、鈴木、田宮、井上、団藤、平野、松尾などから。ちなみに内容は未だほとんど読んでいないのでどうこう論評は出来ない、というかあまり詳しく書ける知識が無い。*1

ところで、この分野でライト・アカデミズムと言えばやはり「たのしい刑法」だろうか。持ってないけどアレは確かに面白いと思った。

*1:具体的には上記で鈴木茂嗣という名前がピンと来ないくらい。