GSV:削除要求のガイドライン - 「理由の無い削除要求」攻撃を行っていると、本当に必要な画像が削除されない可能性がある
Google Street Viewはどこに行っても話題になっている。昨日はもう70代ばかりの親戚の家に行ってきたけど、やっぱり話題になった。
昨日電車に乗っていたら、やっぱり目の前で昼間から飲んだくれたおっさんたちが、やっぱりGSVの話をしている。どうやら主にしゃべっていたおっさんはGSVに否定的な立場だった。
「あれ怖えよなあ。うちなんてよ、車のナンバーまで映っててよ。そんでもって、あの画面の中に不適切な画像はどうのってリンクがあったからよ、削除しろって送ったわけよ。なのに全然消えないんだよな」
ほほう、と思った。というのは、昨日書いた「Googleは削除要請に応じる義務が全くない」という(多分ありえない)立場でない限り、放置することが許されない画像は、いくつか存在するであろうからだ。また、これまでは、削除要請したらすぐに削除されてしまうという話しか見聞きしなかったということもある(それに対して不満をもつ、たとえば代替の写真を掲載しろ、というのは、いくら何でも無茶苦茶だろうと思うわけだが、それは本筋ではないのでおいておく)。
詳しい話を訊こうかとも思ったが、何も用意なく訊いても明らかにおかしな人だし、そういう事例が複数あるなら、GSVトラブル駆け込み寺みたいなページを作れば、他にもすぐに報告が寄せられるだろうと思ったのでやめた。どうでしょうかね、GSV問題画像.inとか作ってみるのは。 これはちょっと軽率だったので撤回する。問題のある画像を不特定多数の人間に晒すことを奨励するのは好ましくない。
8/18追記: やはり削除の遅延は現実に生じているようだ: http://anond.hatelabo.jp/20080817044106
で、ひとつ思ったのは、画像の削除要請に対して、どのようなポリシーをもって接するべきか、という問題だ。これはGoogleに限らず、今後登場するであろう類似サービスについても当てはまりうる問題なので、本来ならばある程度のコンセンサスがあることが望ましい。いずれにせよ、僕の理解を書いておくと
- (1) 客観的に問題のある写真
- (1-1) わいせつ行為などが行われている写真(キスシーンなどは含まれないことに注意) → 高い確率で刑法175条違反になる
- (1-2) 車庫に入っている車のナンバー (登記を閲覧することで個人情報が取得できる) → 個人情報保護法上の問題が生じる可能性が高い
- (1-3) ぼかし処理のバグ等で、顔が明確に映っている写真
- (1-4) 何らかの違法情報 (あまり具体的に考えにくいが、ドラッグ密売の場面を撮影など)
- (2) 主観的に問題のある写真
- (2-1) 自分(であると自分では分かるもの)が映っている写真。特にキスシーンなど何らかの問題がある場合
- (2-2) うつしてもらいたくない自宅の写真。これにも様々な理由が考えられる(ひとつの極端な例を挙げるなら、自宅が違法建築である場合など)。マンションであれば住人は複数存在する。
- (2-3) 写っていることが「好ましくない」と考えられる写真(他人の暴力行為などが映っている場面、他人のキスシーン、風俗街、ドヤ街)
(1-1)、(1-2)、(1-3)については、おそらく迅速に削除することが可能なのではないかと思う。その意味で、Googleは本来であれば今回僕が聞いたような事例については、迅速に対応してしかるべきなのだと思う。そして、それはどうやら以前は正しく行われていたようだ。
(1-4)については難しい問題がある。(1-4)については、客観的に判然としない場合が少なくないだろうからだ。僕の法律の理解に基づいて言えば、それらについては「もしかしたら違法情報かもしれない」という漠然とした「不安感」しか感じられないであろうから、直ちに削除しなかったからといって、そこに過失を認めることはできない、というものだ。
それ以上に難しいのが、(2)の諸事例をどう処理するかだ。これらは、誰が見ても問題があるというのではなく、特定個人にとって問題があるという例である。当人であれば削除要請は正当なものである可能性は高い。しかしそれ以外の人が削除要請しているというのであれば、特にそれがGoogle Street Viewを実質的に無効化するために行われているとしたら、そのような削除には応じるわけにはいかないだろう。
僕は、GSVに否定的な人間が、たとえばひとつの街区全体について(住人でもないのに)そのすべての画像について削除要請をGoogleに対して送りつけていたりするような事例は、十分に生じている可能性が高いと推測する。
しかし、そのような「攻撃」をもし誰かが行っているとしたら、それは直ちにやめるべきだ。そのような行為自体が威力業務妨害罪に該当しうるというだけでなく、(1)に挙げた「本当に削除が必要な画像」が、削除されなくなってしまうためだ。削除要請の量が多すぎると、その対応も時間がかかってしまう。
Googleは(そして他の誰であれ)、そのような「暴力」に屈するべきではないし、暴力でない削除要求は、理性的に粛々と行われるべきだ。
というわけで、われわれ小市民としてなすべきことは、なるべく迅速に(2)の削除ガイドラインを策定し、(1)(2)の両方について「問題のある画像が直ちに削除される」という状態を回復することではないかと考える。
取り急ぎ、(2)の諸事例についての僕の理解を書いておくと
- 必ず削除理由を明記する。自分であるらしい人物が写っているからといって、それだけで直ちに削除を要求する理由にはならない
- (2-1) 削除要請する際には、なるべく自分であると証明できる写真などを添付する。衣類等で識別できることが望ましい。画像は小さめに(受け手がフィルタする可能性もある)。
- Googleは、厳密に本人であることまで要求しなくてもよいと考える。当人らしい写真を持っている人物は、せいぜい関係者くらいであろう。
- (2-2) なるべく住所が記載されている免許証の画像などを添付する。
- (2-3) これは個人で行うのは難しい。本当に写すべきでないと考える(そしてそれには正当な理由があると考える)のであれば、ネット上で騒ぎ立てるというのはひとつのやり方。あるいは「駆け込み寺」のようなサイトがあれば、そこに声を集約するというのもあり。
とりあえずこんなところだろうか。
できれば、(2-1)や(2-2)に関しては、いきなり画像を送りつけるというより、クレーム→本人確認要求→本人情報送信、というプロトコルがGoogleとclaimerの間で成立する方が本当は望ましいが、Googleが個人を識別できる情報を要求することが、プロトコル上発生しないということは考えられる(クレーマーが騒ぎ立てると考えられるので)。その意味では、必要であれば画像等を送信する旨書き添えて送るという折衷的なやり方も考えられる。
こういうことを書くと、「Googleに個人情報を送りつけなきゃいけない理由なんておれには無い!」という拒絶反応が出ることが大いに予想される。実際にはその通りであるかもしれないが、いずれにしろ誰かに対しては立証しなければならないのだし、最終的に法廷で対決することになるなら、いずれにしろ住所等はGoogleに伝わることになる。いずれにせよ、データベース化出来ない個人情報をGoogleが悪用する余地は無いだろうから、Googleのビジネスを利することになる、みたいな誤解に基づく不快感で、自分自身の救済を不完全にすることは、僕はお勧めしない。
また、GSVそのものを潰したいという人間から見たら、以上の対応でGoogleが対応すれば許してやるというのは生ぬるい!ということにもなろうが、僕は別にGoogleはこれだけ対応すれば最終的に許されて然るべきだ、という主張を書いているわけではない(実際のところ、それで充分だろう、とは思っているけど)。