ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

「Googleストリートビュー雑感」へのお返事

http://kiyosakari.blog105.fc2.com/blog-entry-91.html

わたしの議論をベースにいろいろ論考をめぐらせていて、これもそうだけど、一連のGSV関連のエントリが面白いのでおすすめ(わたしと必ずしも見解が一致しませんが)。いくつかの点についてフォローアップしたいと思います。

おそらく,スカートの中も庭先・居室内も保護法益としては私的領域の平穏を乱されない権利として共通なのであって,異なるのは侵害の程度・態様ではないかと思います。

スカートの中を盗撮されないことで得られるのは、「私的領域」の平穏ではなく(だけではなく?)、性的自由の保護という具体的な法益保護の側面があるので、具体的に立法化されているのだとわたしは理解しています。(すくなくともわたしは「そこに法規制があるから」というメタ法益の議論をしているつもりはありません。)

ただし,私的領域が撮影されかねない態様であることを了解しつつ,そのような行為を行った場合には,その動機が好色的興味であっても,あるいは Google社の利益拡大であっても,私的領域の平穏を侵すという認識・認容という意味では違いがないと思います。その意味では,なおも「竹竿の先にカメラを設置して塀越しに盗撮するのと同じ」といい得るのではないでしょうか。

おそらく「故意の成立に必要な事実の認識」と「主観的構成要件要素」の区別がついていないのではないかと思います(主観的構成要件要素というのは、たとえばわいせつ罪におけるわいせつの認識などが該当します)。壇弁護士がMIAUのシンポジウムで


ストリートビュー機械的に撮ったというのがポイント。何かに悪用する意図で撮影していれば裁判所はダメと言うだろうが、現時点では意図のない撮影へのコンセンスはない」
という旨説明したのは、まさにこの区別を指摘しているのです。id:champlasonicはてブ

壇弁護士の「中立的に法律論を考える」と言いつつも「コンセンサスがない」という言い草に終始していることにリーガルマインドを感じない

などと書いていますが、勘違いも甚だしい。壇弁護士は事実を説明しているにすぎません。こういう書き込みの方がよっぽどリーガルマインドに欠けるものです。

本題に戻って。


また,塀についてですが,「塀がある家に比べて、塀がない家だけ特別に保護されないプライバシーが存在するわけではない。」のはそのとおりかと思うのですが,私は,塀が何らの差異ももたらさないということはないように思います。つまり,塀がある場合には,その内部にある私的領域の平穏を犯されないことについては,より期待してよく,これに対する侵害は,それ以外の場合に比べて軽度であっても違法とされるのではないかと思うのです。

わたしはそれは無いと思います。というより、「塀がない家だけ特別に保護されないプライバシーが存在するわけではない」と「塀がある場合には,その内部にある私的領域の平穏を犯されないことについては,より期待してよく,これに対する侵害は,それ以外の場合に比べて軽度であっても違法とされる」は矛盾するのです。

わたしはむしろ、塀の有無が違いを生み出すとしたら、客観的にプライバシー侵害とされる行為があった場合に、それが無過失(「許された危険」)ないし軽過失になるか、あるいは重過失になるかの違いでしかないと考えます。つまり、違法要件ではなく責任要件の問題であると捉えています。