ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

ファルコム音楽フリー宣言

Falcomがロックなことをやってくれたので、無駄に長い記念エントリを書いて心から支持したいと思う。
http://www.falcom.co.jp/music_use/

大ざっぱに言えば、FalcomがリリースしてきたゲームのBGMを、非営利目的での(ゲームに組み込むなど特定用途以外での)二次創作は自由にやってくれてかまわない、という*1。宣言の内容としては、真紀奈17歳Derivative Only Licenseに近い。Falcomは昔からJASRAC管理外で上手いこと商売してきたし、これまでも二次創作に対して寛容な姿勢で臨んできた。Falcomのサイトには、二次創作者から連絡を受けてまとめているリストページがある。

(ちなみに有償販売が対象外であることから、同人販売は禁止しているんだと読んでいる人が少なからずいるみたいだけど、僕はコミケ等での小規模な販売は今まで通り黙認するだけだろうと思う。このフリー宣言はフリーとして解放する領域について明言したものであって、逆方向すなわち禁止のガイドラインを提示したものではない。)

Falcomのゲームには音楽の完成度が非常に高いものが多い。特にPC-88/PC-98FM音源*2の世界ではトップレベルの支持を得ていたと言っても良い。FM音源をいじるソフトがあれば、大抵はソーサリアンイースのBGMがどこからか作られて出てきたものだった。今でも、BGMの「アレンジ版」CDを目当てに旧作のリメイク版を買うゲーマーが多いようだ。時代の流れとともにFalcomMIDIやPCMに移行していったけど、それでもFM時代へのノスタルジーは小さくない。Windows版のYs2にはわざわざFM音源のチープなドラム音を持ってきて使っている曲がある*3

アラサー世代なら皆知ってる「イース」シリーズをはじめ、Falcomで多くの曲を担当した古代祐三は、かつては久石譲に師事していたそうだけど、今でも信者の多いゲーム作曲者だ。氏はアクトレイザーの作曲も担当していて、SFCの黎明期にリリースされたアクトレイザーのBGMの完成度にショックを受けたスクウェアが、ファイナルファンタジーIVサウンドまわりを根本的に手入れし直したというのはこの分野に興味のある人にはよく知られている話だ。

さて、今このタイミングでFalcomが音楽フリー宣言を出してきたことについて考えてみたい。

はてなでもMML記法なんてものが使えて、FIMMLを使ったメロディの記述が可能になっているけど、長いことnon-OSSFM音源エミュレータが支配的だったこの分野で、最近はFlashを使った(しかもすばらしいことにOSSの)FM音源エミュレータがいくつか登場しつつある。最近では先のFIMMLにもFMエミュレータが実装されているみたいだし、僕が最近注目しているSiON(旧SiOPM)では、X68kのOPMなど幅広い音源に対応している。

iPhoneアプリなどでも、音声合成などを実装したものがいくつか存在する*4。Silverlight3でもmoonlight2でも、カスタムメディアストリームがサポートされ、音声合成を実装することも可能になる。実際簡単なアナログシンセサイザのようなサンプルアプリが公開されている

これらの実装によって、FMエミュレータなどを使った音楽作成がアマチュア向けに広がることは、Falcomの特にソーサリアンイースを作っていた古参のメンバーにとっては好ましい事態だ。彼らは今でもこの分野で君臨している*5。これらのエミュレータで、Falcomの旧作のアレンジものがサンプルなどとして広まっていくことは、自分たちの価値を押し上げる、大きなプラスになることだろう。

話が本題の方にずれてしまった(!?)。僕は、SiONが面白いので紹介したかったのだった。奇しくもちょうど先月頃にSiOPM(当時)をいじって書いたMMLが、Ys2の氷壁だったのである。このMMLSiONのJS組み込みテストページに貼り付けると再生できる。MMLは残念ながらほぼ記憶コピなので、正確なものではないし、SSGノイズのリズムパートの記憶が中途半端で、音の作り方もよく分かっていないので、入っていないけど。(後から本物を聴いて似てねーなと思ったのは秘密だ。)

話をSiONからFalcomに戻そう。

Falcomフリークな人たちはたぶんソーサリアンイース1,2をメインに語るだろうけど、僕がFalcomの音楽で一番すげえと思ったのはBrandish3のものだ。当時はYM-2608がそれなりに普及していて、FM6音使えた贅沢な時代である*6。ゲームそのものの評価は低く見られることもあるようだけど(おまいら何のためにfalcomのゲームを買ってんだよという話である)、このゲームのFM音色の練り込みはすぎょい。分厚いギター音色に銅鑼やhuman voiceっぽい音まで作っている。面白いのは↓みたいな音だ。(SiONで鳴らせるように書いた)


#OPN@6{
4,5,
31, 0, 0, 8, 0, 24,0, 4,3,0
15, 0, 0, 8, 0, 0,2, 4,3,0
31, 0, 0, 8, 0, 24,0, 3,7,0
15, 0, 0, 8, 0, 0,2, 3,7,0
};

この音はストリングスなのだけど、OPNのアルゴリズム4で4と3のmultipleを並べることによって、5度の和音になっている。こういう音を作るのはそれほど難しくはないが、常に5度の和音が鳴るのでちょっと使いにくいが、1チャンネルをエコーに回すだけで、つまり2チャンネルだけで、単音なら4音要求されてしまう音を実現できてしまう。彼らはこんな音まで平気で曲に入れ込んで使いこなしてしまう。

音楽としても、Cave, Ruin, Castle, Blue Lake, Hiland, Sanctuaryなんかはとても気に入っている。上の音は昔caveを真似て自分で作ろうとしたものだ(つまり実際に楽曲で使われているのと同じ音ではない)。

ちなみにBrandish3はProject EGGでも遊ぶことが出来る。Brandishのオペレーションは慣れないと難しいかもしれないけど*7。Brandish(1)は最近PSPでも発売されたけど、仮にBrandish3がPSPやDSで出たとしても、僕はFM音源でBGMを再生してくれる環境を選ぶだろうな。

ともかく、ありがとうjdkjdkと言ったらもちろんjavaじゃなくてsound teamだよな常考

*1:細かい条件は興味があれば自分で確認すべきだ

*2:YM-2203とかYM2608とか

*3:バーンドブレスの溶岩とか

*4:まあ要求事項に比して貧弱な入力しか出来ないだろうから、僕はこの方面にはあまり期待していないけど

*5:今、があるとしておこう :-)

*6:まあX68kのFM8音の方が上ではあるけど

*7:僕がEGGで遊んだときはPC98時代のキーと違うところで戸惑った