ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

あまり関係ないような

小倉氏の議論は別に間違っているわけではないのだけど、「はあ、そうすね」くらいの無関係な話だなと思う。僕がid:atsushieno:20080417:p3で書いた「実効性が無い」の意味は、もちろん文字通りの主張をしているのではなくて、規制賛成派が児童ポルノの現物を国会議員に見せて「これでも現状の児童ポルノ対策に実効性があると言うのか」と詰め寄るのと同じことが出来れば十分、という程度のものだし。

(楠さんのエントリで僕が引用した部分を解釈すればそういう文脈で書いていることは分かりそうなものだけど、もしかしたら期待値が高かったかもしれない。)

追記: 僕の文脈に沿ったコメントが追記されてきたけど、今度は正しいような間違っているような…僕が言いたいのは、間違ったやり方はやめて「放置しよう」ではなく、間違ったやり方はやめて「問題のない解決策を重点的に行おう」ですから(ネット教育の低年齢化とか)。

追記2: 今度は「出会い系サイトについて小学校で教えるのか」ですって。教育って、もっと段階的なものだと僕は理解していましたが、もしかしたら最近では違うのかしら。ちなみに経済的コストがかかるのは基礎教科にも当てはまる話なので、およそありとあらゆる教育などやらない方が良いという極端な立場も、確かにとれるでしょう。理論上は。

法令違憲にこだわりすぎでは

http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080418/p1

これは、法令違憲でなければあらゆる条文について違憲のおそれを表明することは出来ないと考えている、ということかしら。適用違憲になるケースが少なくないおそれの大きい条文に対する懸念を「憲法に違反すると考え得る」と表記するのは、刑法175条に関する憲法の教科書を見れば一般的であると分かることでしょう。

なぜ岐阜県青少年保護条例の事件という特定のアーキテクチャについての判決にこだわるのか分からないけど*1、「市場そのもの」が青少年向けコンテンツ提供サービスであるとき、フィルタリングが適用されれば、これは「市場そのもの」からの引き上げになるので、id:atsushieno:20080407 で芦部を引用した部分が、言及されているものと考えるのが妥当でしょう*2。プロシューマーが実効的な表現の場をそのサービス上に有している場合がこれに当てはまります。例えばモバゲーにたくさんのトモダチがいる中高生が小説みたいな日記を書くような態様。モバゲー自体は18歳以上でも読めるけど、myspaceみたいに年齢別に可読範囲が限定されたりしたらどうなるか。

(一般のwebサイトで公開できるじゃん、という議論は、そもそもペーパーメディアで出版することができるから何をフィルタリングしても問題ない、という極論と、何も変わらないでしょう*3。発表するメディアの選択の自由は実効的な表現の自由を担保するものであるという一般論を、少なくとも僕は信じます。)

もちろん上記引用部分はこの問題を直接意識したものではないけど、逆にこういう問題を直接意識した上でかつこれが検閲ではないという学説があるというならぜひ見てみたいです(どういう憲法学者が新しい問題に積極的に取り組んでいるか知りたいという意味で)。

*1:法律学素人の人たち向けに補足しておくと、ひとつの事件について適用違憲適用違憲でないかという判決が出たからといって、その判決が言及していない問題についてまで先例的効果があるわけではない。

*2:独占禁止法的に考えれば、市場策定は個別具体的な事例に依る

*3:そもそも本当にそれが可能であるか、外部サイトに置いた場合にリンク先などがアクセス可能になるかは、分からないし。