followup on 二階建て制度
id:shiranuiさんから補足エントリでtrackbackをいただいたので、それに関して。
まず、条約との関係について。条約が憲法以外の法令に優先する(これは通説的見解)という点は、細かい議論をするときに持ち出せるような話ではなく、一般原則にすぎません。著作権法という法律があり、デフォルトでそれが適用されるという制度になっていれば、ベルヌ条約の要請は満足していると十分に言えます(生存権を根拠に死刑廃止論を主張する人が居ない(?)のと同じです)。厳密な解釈・適用を要求するということであれば、条約で定められている権利を制限することを、民法に基づく契約でオーバーライドできることを、きちんと説明できないはず。
で、その「説明」を試みているのが、続く「契約と法律は違う」論で、僕の立論としては上記の批判だけで十分なのだけど、この点についても一応触れておこうかな。
第三者との関係などという特別な概念を持ち込む理由はありません。上記のような厳密な考え方を要求・適用すれば、全ての権利義務は事務管理等の法律行為を通じて第三者との接点を持ちうるものなので、契約と立法に相対効か否かという違いがあるとは言えません。著作権の専有状態が早めに消失したところで、第三者が受ける影響は、著作物が利用「できる」という正の方向にあるものですし、それは単なる事実関係であって、誰との法律関係も存在しないのです。
ちなみに「二階」の権利が切れても50年以内であれば著作権法の保護に戻す、というのは、二階建て法案の立脚点として意味がありません。何しろ商業コンテンツが無駄に長い権利を保持するのをどうやって抑止するかという点こそが、この制度案の本旨なのですから。*1
というか、もしかして世間では、二階建て案というものがなぜ提案されているのか、あんまし理解されていないのかな*2。「ベルヌ条約や著作権法の改正を待っていたら、僕らが生きているうちに制度がまともになる見込みが無い」からだって、前のエントリでも書いたんだけどなあ。