ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

リンク集作成における共犯の客観的帰属について

ふとこの記事を読み直すことになったのだけど
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0610/27/news029_2.html

先日ジュンク堂で立ち読みした島田聡一郎(イケメン?)の共犯論の本には、殺人行為の完了後に(事前の連絡なく)逃亡を容易にした場合に、幇助罪を認めるのは妥当でない(実行行為は完了しておりその犯行を容易にしたとは言えない)みたいなことが書いてあって、まあその通りだよなと思った。幇助というのは、実行行為を幇助することだ、ということを忘れてはいけないのだと思う。

そういう視点で考えれば、リンク集作成を幇助とする見解はやっぱり変だと思う。

…って思っていたら、既にid:yjochi:20061031に書いてあったのを発見。

小倉弁護士は、公衆送信行為は状態犯ではなくて継続犯だから、やはり幇助になりうる、とコメントで書いているのだけど、それが問題になるケースというのは、現実的にはネット上にうpした状態でまだ公衆への提示が完了していない場合だけだろうと思う。状態犯であれば、状態を維持していること自体がひとつの実行行為であり、被害の拡大というのは、幇助の成否については判断要素ではない。既に行われてしまった犯行について、犯行の実現を容易にしているとすら言えないからだ*1。危険創出連関も危険実現連関も無いのだから、客観的帰属が存在しないのである。

状態を悪用した別個の実行行為として評価できる場合(他人が発生させた火災で燃えている建造物の中に意識の無い人を運び込んだりする場合)であれば、独立した正犯として問擬すべきであろう。そこでは正犯として立件するに相応しい客観的構成要件が要求される(もちろん故意も)。それが不可能であれば、やはり犯罪は成立しないのだ。

*1:もちろん、事前にリンク集を作りますよと正犯に連絡したという事情があれば話は別だが、ここでは一般的なケースを考える。