秩序の何たるかは我々が決定する
昨日新宿をぶらついていて発見した。
- 作者: 浜井浩一,芹沢一也
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/12/13
- メディア: 新書
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犯罪少年の凶悪化という幻想については、かつてGoogle八分されていた少年犯罪データベースが詳しいが、本書では刑法判例をそれなりに読んできた人であれば、何となく体感できるであろう犯罪統計のカラクリについて解明している良書である。
かつてid:atsushieno:20060805:p1でも少し言及したが、窃盗・恐喝+暴行と、強盗との境目は、近年かなり強盗よりに動いている。もし警察行政関係者が「近年は凶悪犯罪が増加している」というデータがほしいなあ、と思ったら*1、強盗罪の実行行為における暴行の意義を「反抗を抑圧する重大なもの」よりも緩やかに解することで、事後強盗も含めればかなりの件数の「凶悪犯罪の増加」をもたらすことができる。おそらくこの辺りは現在よりも価値中立的な観測が必要となることだろう。
強盗罪がそもそも凶悪犯罪とされ、5年以上、致傷の場合は6年以上無期などという殺人よりも懲役の重い犯罪とされた背景には、昭和20年代〜30年代の人間があまりにも凶悪で、押し入り強盗が多発し社会問題となったということがある。窃盗行為を発見されそうになった犯人が被害者を振り払って逃走する行為について事後強盗として断罪し、5年以上無期などという刑を科することなど、常識的に考えればあり得ない話なのである。
僕が以前から問題視していた盗難自転車発見の届出についても言及されている。盗難された自転車が発見された時、地方自治体の役人(自治体の天下りバイトと思しき老人)がたむろしている自転車保管所で手続きをするとき、「自転車が発見されたので被害を取り下げます」という書類に捺印を要求された覚えはないだろうか? あれは統計上の欺罔に悪用されている。盗品が発見されようがされまいが、窃盗罪は既遂であり、警察には捜査を行う義務がある。捺印してはならない書類なのである。