ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

代理母 part III

2回書いてみて、どうも僕は有償代理母規制論的立場に立っているのではないかと思えてきた。吉田「民法解釈と揺れ動く所有論」でも、アメリカの論争では、代理母に否定的な立場も無償代理母を禁止すべしとする立場はほとんど無いと書いているし(吉田自身は代理母否定派のRadinに最も強い影響を受けているはずだ)、妥当な立場ではあるはずで、日本弁護士会の一律禁止!みたいな立場がむしろ極端なはずなのだけど。

part 3というよりはpart 2.5みたいな短い内容だけど、とりあえず。

民法734条との関係

家族法との関係で、本当の肉親は誰か、という問題は、単に規範的な問題ではなく、生理的な問題としても意識する必要もあるのではないか。たとえば、日本では三親等以内であれば婚姻できないことになっているが、その理由には、社会的・文化的理由と並んで優生上の理由が挙げられる(かつては通説的であったし、現在でもそうなのではないかと思う)。

優生上の理由が妥当なものであるとしたら、代理母から誕生した子にとって、肉親は誰になり、優生上の理由から婚姻を禁止されるべきは誰になるのか? 遺伝的形質は遺伝子に由来するのだから、母胎提供者よりは卵子提供者の親族になるのではないかと思われる。母胎が遺伝的形質の形成に影響するというのなら話は別だけど。

もちろん、これは現状に対応し切れていない現在の法律に基づく分析であるから、法律を改正して、法律上の親を母胎提供者としつつ、遺伝子提供者(家族法上は他人になるわけだよな)の直系・傍系血族について規定することは可能だ。

また、優生上の理由など存在しないという立場であれば、こんな論点は存在しない(が、優生上の理由の存否は法律学者が法律論の都合に合わせて判断すべき事柄ではない)し、代理母を法律上禁止するという立場でも同様だ(が、もちろん法律上の議論が面倒だからといって法律上一切を禁止するという立場はあり得ない)。