トナーカートリッジの偽ブランドを排除するための試論
最初に断っておくと、僕は結論がむしろ違法行為を助長するのではないかという懸念をもっている。
○トナーカートリッジの偽造品に注意 [slashdot.jp]
カートリッジがプリンタ本体と独立して販売できる存在であれば、独立してカートリッジを販売する行為に対して、その取引を合理的な理由なく制限する行為は、不当取引制限になる。もしCANONが他社のカートリッジを使用したプリンタを保証対象外とするとしたら、それは不当取引制限にあたると言えよう。
電池を使用する電子機器が、自社ブランドの電池以外では誤動作する可能性があるからといって、他社ブランドの電池の使用をした場合には動作保証対象外とすることは、合理的であるとは言えない。
ただし、誤動作する可能性が高いことについて、何かしらの合理的な理由が存する場合は、もちろんその限りでは無い。ただし、設計を公開していないから完動品を作れるはずがない、よって他社ブランドの製品は使用できない、という主張は、自ら設計を公開できる立場にあるCANONが、独占禁止法違反を迂回する正当化事由としてはあり得ない。
設計を公開しない正当な理由として不服が想定できる可能性として、設計に知的財産が含まれるというものである。しかしながら、カートリッジの製法について(1)特許・実用新案権が存在するのであれば、それらの権利は公知であることで専用実施権を得ているのであるから、設計を公開しない理由にはならず、(2)特許・実用新案権が存在しないのであれば、保護すべき知的財産権など存在しないのであるから、やはり正当な理由があるとは言い難い。当然、設計に選択肢が無い部分には、商品形態の模倣のような不正競争防止法上の保護要請もここには無い。残るのは設計図を公開しないという「単なる自由」のみであり、これでは「正当な理由」にはならない。
当然ながら、カートリッジそのものの知的財産を保護するという目的で行われているのではない権利行使は、独占禁止法21条の適用除外にはあたらない。
よって、偽ブランドなど作って商標権侵害で訴えられるリスクを冒すよりは、自ブランドで販売して、CANONが独占禁止法違反で妨害してくるようだったら公取にもっていく、というのが筋ではないか、というのが僕の結論。
とはいえ、やはり公取を動かすというのは難しそうにも思う。冒頭に書いたとおり、プリンタメーカーによる違法行為を助長しているような気がしてきた。