ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

報酬請求権的構成への転換

上記論文を見ていて気付いたことがもう一つあったのですが、この論文は特許権が禁止権的構成であることを完全に無視して論じているんですね。すなわち、特許製品転取得者に対して、報酬請求権ではなく禁止権を行使するかもしれないという点を考慮していないわけです。

とはいえ、僕はここでまた打越論文を否定したいわけではありません。むしろ、プロパテント・アンチパテントのどちらの陣営でも、特許権が禁止権的構成であることは既に意識されていないということですから、特許法は報酬請求権的構成に切り替わるべきなのだ、ということがハッキリと見えてきたように思います。その意味では、この論文は前向きに評価できるのではないかと思います。

実のところ、逝って良しなトンデモ論文だとすら思っていません。取引安全を害する態様での契約を競争法に基づいて規制しよう、という考え方は、理論構成としては比較的筋が通っています(とはいえ、現実的に競争法に基づいて規制というのはかなり薄っぺらいものしか想定できないので、この論文からは無責任な雰囲気が大いに感じられますが)。ここでは当然に、特許法独占禁止法の適用を受けることが前提になっていることにも留意すべきでしょう(これは公正取引委員会における独禁法21条解釈にも適合します)。