ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

http://opentechpress.jp/~mhatta/journal/424

重要。まずは読むべし。八田さんの主張を理解した上で、以下を読んでもらいたい。

「保険」については、たまたま僕もMoglenからの返答に含まれていたGPLv3「Novell排斥条項」案を見て、オープンソース保険の類はどうするのか?と訊いているところなのだけど、↑はどちらかと言えば↓の話のことを気にしているのだろう。

http://diary.imou.to/~AoiMoe/2006.11/early.html#2006.11.09_s01

僕には、GPLのスコープにおいて要件効果で考えれば、顧客を訴えないという非係争特約がある場合と無い場合とで違いがあるとは思えない。非係争特約が無い場合であっても、「あなたがこの契約書の条件を免除されるわけではない」という部分は、「配布の時点で満たせない」(保証できない)事に変わりはないはずだ。

非係争特約がGPLに基づく配布について特に*1意味を持たないという事実は、から、これはGPL第7項の要件効果には関係しない、と僕は理解している。*2

なお、今まで述べてきたような「保険」を結んでいない場合は、特許侵害訴訟で負ければライセンシーは全員雁首揃えてコードを利用できなくなるわけで、少なくとも「分断」は発生しない。それはそれで情けない事態ではあるが。

これが、非係争特約が有ろうと無かろうと現実に発生する結末だ、と僕は理解している。GPLに基づいて配布される環境下において、特約の庇護下にある者とそうでない者との間に「分断」は生じない。

ちなみに、Red HatがOpen Source Assurance Programで提供しているような「特許侵害訴訟が起こっても頒布側たるウチが全責任を引き受けますから、あなたがたライセンシーは何が起ころうと今まで通りGPLに従ってリスクフリーに利用できます」という意味での「特許保険」は、特許侵害によって行使できなくなったユーザの自由を頒布者が補填するわけで、当然GPL第7項に違反しない。権利の取消と補填で、いわば方向が逆なのである。

Red Hatの補償条項は補填だから取消にはならないのでGPL違反にはならない、というのは誤認だ、と僕は考える。Red Hatに、顧客がGPLに基づいた再配布や改変を行うこと*3を、補填によって為さしめ得るとは考えられない。どちらかと言えば、特許に抵触するコードを「消毒」するなどして何とかします、そのための費用は負担します、とか、そういう性質のものだと僕は理解している。これはNovellが(少なくともMonoにおいて)特許への対応策として説明している内容と同様のものだ。

*1:Novellが全ての著作権を保持している場合を除く

*2:例え話としては、殺意があっても無くても正当防衛が正当防衛でなくなることが無いのと同じくらい、関係のない要因である。

*3:何しろGPLの他の条項、特に第5項には影響しないのだから