ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

ネット上の「犯罪」を評価する規範は…

id:ysmatsud:20080412がおもしろかったので。コメントで書こうかと思ったけど長くなりそうだったのでここで。案の定長くなっちゃった。

リアルで行われたら重大な犯罪をネット上で行われても、その被害の本質はリアルと変わらないケースはある。そういう行為は今後刑法で犯罪とされていくのか、刑法のあるべき規範はどうなっていくのか、という(まあ入り込むきっかけとしての)話。

実際には、同じ性的自由に対する罪である176条と177条が刑罰として全く重みが違うのは、肉体的な「被害」を考慮した上でのものだろう。刑法の価値基準として、あくまで「正常な」生理機能は181条の傷害とは評価しないが、この「被害」を評価しないということはいくら何でも無いだろうから、これは177条の刑罰の重みに反映されていると考えるのが妥当なところだろう。何をもって176条と177条を異ならしめるのかは、一応実務上の基準はあって*1、それと照らし合わせると中間をすっ飛ばした不整合な解釈だけど、医療技術の向上による危険性の評価も確たるものではないし*2、立法上これを明確にするというのも厳しいだろうな。

いずれにせよ、そのような可能性が無いネット上でのレイプは、100%リアルと同等には解釈できないだろうなあと思う。それより、ネット上でのキャラクターがネット上での法律で裁かれ、ネット上の人格がその重みを背負うというかたちの方が適切かもしれない。ネット上での人格が受ける犯罪被害が相当に重いのであれば、ネット上での人格が受ける刑罰も相当に重いだろう。

(ここで各人のネット上の人格に対する思い入れが異なりうることに気付いた人は、現実に発生する殺人などについて、被害感情よりも犯情が刑罰に与える影響が大きいことにも気付いてもらいたい。世の中けっこう無情に動いているものですな。)

エヴリブレス」あるいは「クラインの壷」くらいリアルとバーチャルの境界が曖昧になってきたら、リアルに問題となってくるのかもしれないね。

同じような話はid:atsushieno:20070802にもあったなあと思った。

*1:詳しく書いてある教科書もあるけど、ここに書く必要は無いだろう

*2:ちっ…時代が変わって技術の進化もあれば危険結果の評価の重みも変わるべきだろう、って書こうと思ったのに。