ものがたり(旧)

atsushieno.hatenablog.com に続く

2009年Mono Project総括

今年はMonoチームにとっては大きな1年になったと思う。これから僕が書くのは、Miguelがチームに向けて送った言葉をもとにして総括するものだけど、全部2009年に起こったことだ。

  • 2月。Moonlight 1.0がリリースされた。この直前にオバマの大統領就任演説がSilverlightでストリーミングされ、Moonlight 1.0のリリースビルドはそれをうまく再生できるよう適宜調整された。リリースの正式発表よりこのタイミングで知られたことが大きかったかもしれない。
  • 4月。Mono 2.4のリリースとともに、初めて商用サポートが提供されるようになった(日本人が日本語でサポートするのはまだで、僕が非公式にやっているだけだけど)。Application Serverという名前で行われている。
  • ほぼ時を同じくして、MonoDevelop 2.0もリリースされた。ここには初めてのmono debugger統合が追加され、IDEでしか生きてこなかった人たちにも幅広く使ってもらえるようなものになった。
  • 今年は新しい機能の追加も数多く行われた。Silverlight相当のWCFLinq to SQL、metadata verifier、新世代ガベージコレクタ、C# 4.0、xbuild (MSBuild)、PS3Wiiのサポート、ParallelFX、LLVMサポート、OSSで提供されているDLRの統合。実際に稼働している巨大なASP.NETプロジェクトをMonoで動かすことも現実的に行われるようになってきた。
  • 4月から開発が始まったMonoTouchが、9月には1.0としてリリースされ、その後1ヶ月に0.1以上のペースでバージョンアップが進んで、現在では1.4となっている。そのわずか3ヶ月に追加されていった機能も幅広い。MonoTouchは既存のMono.Xnaのコードを再利用したXnaTouchなどの派生プロジェクトも誕生させるにいたった。
  • MonoTools for Visual Studioプロジェクトも正式リリースを迎えた。これによってネット越しに.NETアプリケーションをデバッグしたりパッケージングしたりSUSE Studioアプライアンスを短時間で行えるようになった。
  • 10月には、Soft Debuggerの登場によって、monoの開発環境には大きな変化が生じた。ネイティブコードからの地道なデバッグをサポートするmdbとは異なるアプローチで設計されたsoft debuggerは、iPhonePS3などの特殊環境のデバッグが可能にしただけでなく、ASP.NETやMoonlightなどもデバッグできるようにした。当初は晩秋にひと通りリリースされる予定だったMono 2.6, Moonlight 2.0, MonoDevelop 2.2が遅れたのも、ひとえにこのsoft debuggerを何とかしてリリースに含めたかったからだ。
  • MonoDevelop 2.2は、それまでほぼLinux環境のみで動いていたのを、MacにもWindowsにも広げたリリースになった。Mac版の改善には特にMonoTouchユーザの存在が大きく影響している。MD 2.2は、クロスプラットフォームの実現以外でも、さまざまな機能拡張が行われていたのだからすごい。コードの書き直しも行われ、ライセンスはGPLからLGPLになって、商用アドインの開発も可能になった。
  • そしてMoonlight 2.0が12月にリリースされた。Moonlight 1.0はmanaged code抜きでのRIA環境でしかなかったけど、2.0になってC#とCoreCLRをフル活用したアプリケーションが開発・実行できるようになった。Miguelはその間にMicrosoftとのcodecのagreementの交渉を進めて、SUSE以外の環境も守備範囲に含めてもらえるようにしてきた。

来年は、今年広げた地歩を固める作業が待っている。Tools for VSチームはVS2010をサポートしなければならなくなるし、SGen-GCは正式にリリースされ、一方でMoonlight 3もリリースされることになるだろうし、.NET 4.0の開発も行われていくことになるはず。
サーバサイドの開発は今年から本腰を入れていくことになるだろう。ああ、僕の仕事はめんどいことになりそう…w

そんなわけで、盛りだくさんの1年でした。来年も楽しいことがいろいろ起こせるようになるといいなあと思っています。来年もよろしく!