フリーソフトウェア作者は独占禁止法違反を為し得るか?
本当はGPLの見えざる手を取り上げようかと思ったんだけど、技術職だけど文系男子の綴るblogとしては、こっちのが気になった。奥氏の議論については、まつもとさんがすでに論破しているので(まあまだongoingな議論だけど)、こっちはあまり気にしないことにする。*1
以下、公正取引委員会の見解に準じて、独占禁止法は同法21条により著作権には及ばないという説は切り捨てて論じる。21条が適用されると主張する人は、あんましこの界隈の人には居ないと思うけど、もしいたら「独占禁止法21条は特許権や著作権には適用されないからGPLは問題ないはずだ」といつもどおり大きな声で主張して頂きたい。
まず、
しかし、大昔にGPLのVersion 2 or later versionをソフトウェアに採用したプログラマは、日本では独禁法違反かもしれない条項を自分のプログラムのライセンスに採用しようとしたかもしれないわけであるってリスクを承知のうえなんですかね?これはほとんどのF/OSSプロジェクトについては意味を成さない。なぜなら、独占禁止法の適用対象は(ほぼ)事業者あるいは事業者団体なんです。個々のプログラマー、あるいは数人のプロジェクトであっても、組合を有している人は限りなくゼロに近いだろうし、僕らみたいに会社の業務として開発していれば、それは法人著作だから、個々のプログラマーがライセンスを決定する立場にはない*2。これらのライセンスが独占禁止法の適用対象となる行為に用いられることで、個々のプログラマーが負っている「リスク」って何ですかね?
(追記…michyさんに補足をいただきました。つまり、キミたちの実験がかくばくだんを作るのに使われるかもしれないよ、っていう意味での「リスク」かな…)
(ややオフトピだけど)GPLやMPLやCPLのNAPが不当な取引制限であるとする考え方は、個々のソフトウェアの著作権許諾禁止が「競争の実質的制限」に該当する、という前提があると思うのだけど、大抵のソフトウェアには代替性があると思う。非GPLなCコンパイラとか。NetBeansの存在を考えるなら、Eclipseですら、IDEとしては代替性があると言えそうだ*3。これは、フリーソフトウェアにはなくてWindowsやMS Officeにはある大きな特徴のひとつであろう。
ちなみに「公共の利益に反して」を持ち出したがる人もいると思うけど、これはあまり適切なブランチではないと思う。この議論を押し通すには、公共の利益=自由競争秩序説を覆さなければならず、結局「ソフトウェア特許はイカン」という議論を前提としなければならないだろうから。でも、それが前提なら、そもそも問題となる特許権自体が存在しなくなるので、こんな議論をする必要はない。いや、別に僕はソフトウェア特許肯定論者ではない(他のソフトウェア特許否定論とはちょっと違う主張をもっているけど)。